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　　　　　　　　　　　　　　　　　　補足

　　　　　　　　　　　　1. Ayu Ready ?
　もう少しだけ補足して、この評論文を終わりにしたい。
　2004年3月、｢Ayu Ready ?｣が終了した。一年半続いたこのバラエティー番組は、夜遅い時間帯だったにも拘らず、毎回のように8パーセントを越える驚異的な視聴率を上げた。なぜだろうか? -- 彼女のファンが沢山見たから? ゲストに魅力があったから? ゲストと彼女のデュエットが聞けたから? -- 勿論そうした理由もあっただろうが、ここで僕は二つほど、殆ど指摘されることのなかった理由を指摘しておきたい。一つは、彼女がホストとして適任だったから。もう一つは、彼女がゲストを心から歓待していたから。
　彼女は自分で話し下手だと言っているので、多くのファンもそう思い込んでいるのだが、冷静に客観的に見てみるならば、結構会話が上手い方だと思う。言葉をはっきり発音し、変な癖がなく、適度に天然ぼけが入っていて、場を楽しくすることができる。また彼女は特に、相手に合わせ、相手から会話を引き出す能力に優れていると思う。(他の若い女性歌手がホスト役になったとして、彼女以上に上手くできるかどうか、想像してもらいたい。) そして、ホストに必要なのは何よりも先ずこの「聞く能力」なのであって、多くの人が誤解しているように、べらべら喋り捲ったり、冗談を連発したりできる能力ではない。彼女は聞き上手だと思う。
　また、この番組に出たゲスト達が総じて、他の番組に出た時よりも楽しそうだったことに、皆気付いただろうか。その理由は、彼女が彼等を心から歓待していたからだ。現在、明石家さんま、ビートたけし、ダウンタウン、とんねるずといった人達がホストとして最も能力があると一般に思われているのは、残念な、誤った風潮だと思う。なぜなら、彼等はゲストを小馬鹿にすることが多く、棘のある冗談を言うことも多いからだ。彼等の冗談を好む視聴者も多いかもしれないが、僕のように不快に感じる視聴者も少なくないはずだ。「Ayu Ready ?」の高視聴率は、そうした潜在的な、より健全な面白さを求める需要に応えた結果でもあったのではないか、と僕は推測している。なお、彼女は自分よりも年上のゲストに対しては必ず敬語を使っていたが、正しいマナーであり、聞いていて心地好かった。

　　　　　　　　　　　　2. スーパーテレビ
　2004年4月12日放送の「スーパーテレビ」では、彼女の今までの歌手生活におけるいくつかの新事実が明らかにされた。色々考えさせられることが多かったが、ここでは二点に絞って感想を述べてみたい。
　一点目は『 A Best 』に関して。2001年初頭、このベストアルバム発売企画が突然持ち出された時、彼女は「自分は浜崎あゆみという人間ではなくて、組織の中の一部、 avex の商品なんだ」と思い知らされ、「それならここでとことん人間として生きてやれ、組織と戦ってやれ」と思ったという。彼女が『 A Best 』発売に不本意だったというのは、僕の推測通りだったのだが、この言葉を聞いて僕は複雑な気持ちになってしまった。と言うのも、確かにこれはいかにも彼女らしい、真っ直ぐで立派な決意なのだが、結局それが avex 経営陣を最も喜ばせる結果をもたらしたと思うから。
　この時の彼女の選択肢としては他に ①しばらく休業する ②自分は商品なんだと割り切り、無難で心地好い歌と PV を制作する、といったことが考えられたのだが、① の場合には勿論 avex にお金が全然入らない。② の場合も、恐らく作品がマンネリ化し、人気は徐々に下降線を辿ったことだろう。商品としてではなく人間として生きようと決意したからこそ、彼女は異例の四曲歌い直しを行ない、それが結局付加価値となって､『 A Best 』はそれまでで最高の売上げを達成した。組織と戦おうと決意したからこそ、彼女は「束縛と自由」をテーマとする三本の PV を作り、それらはいずれも見事な出来映えとなり、彼女の人気を高めた。2001年に制作された全てのシングル曲、アルバム曲についても同様のことが言える。彼女は組織と戦おうとし、結果的にこれ以上ないほど組織に貢献してしまったのだった。
　もう一点はドームツアーに関して。例の転落事故が本番二時間前だったことにもびっくりしたが (僕はもっと前だと思っていたから)、それ以上にショッキングだったのは、リハーサル中彼女の左耳が難聴になっていたことだった。結局彼女はドームツアーを強行、終了した時には左耳の聴力を殆ど失っていたという。(痛ましい話だ。) -- では､現在はどうなのか。テレビ放送の翌日、彼女は Team Ayu の掲示板にこう書いた。
　この事に関しては本当にネガティブにはなってないの。なぜかと言うと、私の左耳の代わりに皆が私の歌を聞いてくれてるでしょう ?　 (Team Ayu 掲示板 2004年4月13日)
　間接的な表現だが、これを最も自然に受け取るならば､彼女はもはや左耳では全然 (あるいは殆ど) 聞くことができない、ということだろう。他の人はこの新事実を知って、どんな感想を持っただろうか。
　僕は先ず、ドームツアーの企画そのものを問題にすべきだと思う。そもそもなぜドームだったのか。一番多くの聴衆を収容でき、一番儲かるからだろう。だがそのために、彼女は多大な準備をしなければならず、大変なプレッシャーを受けることになり、彼女の耳は大音量に晒されることになったのだった。更にその翌年のこともある。前に書いたように、2002年は彼女が最も大量の仕事をこなした年であり、ツアーコンサートの回数だけでも 41回を数えた。avex 経営陣は、左耳に問題を抱えた彼女になぜこれほど多くのコンサートをやらせたのか。これらのことは、法律的には罪にならないかもしれない。が、道徳にははっきり反している､と僕は思う。
　ここ数年、avex 経営陣は株主の不満を和らげるため、浜崎あゆみへの依存度を減らすと言い続けている。しかしそれは表向きのこと。内実は、彼女と並び立つような人気歌手が現れていないため (そう簡単には現れないだろうが)、相変わらず収益の半分近くを彼女に稼がせている。仮にもし今度、彼女がツアー中に右耳の不調を訴えたとしたら、彼等はどういう態度を取るだろうか。恐ろしい想像だが、僕は彼等がツアーを続行させる可能性が非常に高いと思う。僕は最後に、今まで仄めかすだけに留めておいたことを、はっきり書いておこう。-- 彼女にはレコード会社を移籍してもらいたい。

　　　　　　　　　　　　3. 浜崎あゆみの統合
　・あゆと浜崎あゆみ
　・アイドルとアーティスト
　・歌手とファン
　・大人と子供
　・男と女
　・日本人と外国人
　・個人と社会
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(了)

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